基本的な内容を解説
現代の企業経営においてデータ分析は必須であり、基幹情報を管理するERPシステムの活用が欠かせません。そんなERPシステムとして世界中で導入されているのがSAP社のソリューションです。本記事では、SAP社が提供するERPシステム「SAP S/4 HANA」の概要や導入メリットなどについて解説していきます。
SAP S/4 HANAは、世界的なソフトウェア企業のSAP社が製造・販売するERPシステムです。ERPとは「Enterprise Resource Planning」の頭文字をとった略称で、会計・人事・生産・物流・販売といった基幹情報を統合的に管理するマネジメント手法を指します。
ERPは広義では企業の経営資源を効率的に運用する概念を示すマネジメント用語です。しかし、近年では企業の基幹情報を統合管理するITシステムを指して、ERPと呼称する傾向にあります。
SAP社は1973年に世界初のERPシステムといわれる「R/1」をリリースし、それ以降「R/2」「R/3」「SAP ERP」「SAP HANA」と、バージョンアップを繰り返してきました。今ではERPシステムそのものを指してSAPと呼ばれることもあるほどで、SAP社のERP製品は基幹系システムの代名詞といっても過言ではないでしょう。
日本市場においても1000社を超える企業が、SAP社の製品を基幹系システムとして導入しています。そして、SAP社が提供する現行のERPシステムがSAP S/4 HANAです。
SAP S/4 HANAは、SAP HANAを標準プラットフォームとする第4世代のERPシステムとして2015年にリリースされました。SAP HANAを基盤として、より高速かつ正確なデータ処理を可能にしたERPシステムです。
2019年7月に行われたプレスリリースによると、SAP S/4HANAの導入顧客数は11,500社に達したと発表されました。GoogleやMicrosoftにも採用されており、日本国内でも伊藤忠商事やNECといった大企業が導入しているソリューションです。
1973年にR/1がリリースされて移行、SAP社はERPシステムの先駆者として市場シェアを伸ばし続けてきました。そして、今では全世界で何万社もの企業が自社の基幹系システムにSAP社の製品を導入しています。
しかし、その圧倒的な市場シェアゆえに多くの企業で「SAP2027年問題」という課題が浮き彫りになっています。SAP2027年問題とは、SAP ERPのメインストリームサポートが2027年に終了を迎えるという問題です。
現在、旧世代ERPシステムを利用している企業は、2027年までにシステムを移行しなければメインストリームサポートを受けることができません。本来、SAP ERPのメインストリームサポートは2025年で終了する予定であり、経済産業省もDXレポート内にて警鐘を鳴らしていました。
そして、これが「2025年問題」として世界的な問題へと発展したことを受け、SAP社は2年間のサポート延長を申し出たのです。2年の猶予ができたものの、依然として多くの企業にとってSAP S/4 HANAへの移行が焦眉の急を要する経営課題となっています。
SAP S/4 HANAは、SAP HANAを基盤としてアーキテクチャを全面的に再構築することで、より高速な計算処理が可能となりました。また、UIやUXを再設計し、操作性や利便性が向上しているのも大きな特徴です。
ERPシステム導入の目的は、財務や会計、生産や物流など、企業の基幹情報を統合管理することで、組織全体における業務効率の改善と労働生産性の向上に貢献することといえます。そのため、膨大な基幹情報への高速なアクセスと円滑なデータ共有機能が不可欠です。SAP S/4 HANAはそれらを兼ね備えたERPシステムとして、新たな市場価値の創出に寄与するでしょう。
SAP S/4 HANAを導入することで得られるメリットは、大きく分けて「ゼロタイムレスポンス」「分析・レポーティングの統一」「オンプレミス・クラウド双方に対応」の3つです。ここからは、SAP S/4 HANAの導入メリットについて詳しく解説します。
ゼロタイムレスポンス
SAP S/4 HANAの導入がもたらすメリットは、ただ高速な計算処理能力を得られることではありません。高速化された計算処理によって膨大な経営データを分析し、業務効率化と生産性の向上に寄与するという点が最も大きなメリットです。
SAP S/4HANAでは、ソフトウェアを実行する際にプログラムやデータをRAM上で読み込む「インメモリデータベース」を採用しています。このインメモリデータベースによる高速なデータ処理を、SAP社では「ゼロレスポンスタイム」と呼称しています。
分析・レポーティングの統一
従来のSAP社のERPシステムは、分析やレポーティングをする際に別に構築されたデータウェアハウスが必要でした。データウェアハウス(Data Warehouse)とは、直訳すると「データの倉庫」となり、経営データ分析の基盤として利用されるソリューションです。
SAP S/4 HANAではデータウェアハウスを構築せずとも、同一プラットフォームでのデータ分析が可能となっています。
オンプレミス・クラウド双方に対応
SAP S/4 HANAの大きなメリットのひとつが、オンプレミス型とクラウド型の両方に対応している点です。現在、システム環境の主流は、クラウドファーストへと移り変わっています。オンプレミス型は莫大な導入費用や管理コストが必要となるため、多くの企業がクラウドシステムへと移行しているのです。
しかし、オンプレミス型はセキュリティ管理や拡張性に優れるというメリットがあり、必ずしもクラウド型が優れるとは限りません。SAP S/4 HANAは企業規模や事業形態に合わせて、オンプレミス型とクラウド型のハイブリッドサーバーを構築することができます。
近年、多くの企業で進んでいるのがシステム環境のクラウド化です。SAP2027年問題の影響もあり、とくにERPシステムのクラウド移行が増加傾向にあります。そこで、システム環境のクラウド化や移行を検討している企業におすすめしたいのが、NetApp社のSAPソリューションです。
NetApp社はSAP社にソリューション構築を支援するパートナーとして認定されたベンダーであり、SAP HANA運用の簡易化やシステム環境の移行サポートなどを提供しています。
NetApp社は「AWS」や「Microsoft Azure」、「Google Cloud」といったクラウドサービスのパートナーでもあり、世界中の企業の導入支援を行っている企業です。豊富な実績に裏打ちされた高い技術と深い知識によって、ソリューションの導入や移行を支援します。
ERPシステムの移行はデータの消失や破損といった重大なリスクが伴います。SAP S/4 HANAへの移行や新規導入を検討している企業は、データ移行におけるリスクを最小限に抑えるためにも、NetApp社の導入支援サービスの利用がおすすめです。
テクノロジーの発展によって、人々の暮らしの便利性と豊かさは日々向上しています。しかし、その利便性と豊かさは苛烈な競争原理の上に成り立っており、市場競争性は激化の一途を辿っているのが実情です。
競争が激化していく市場のなかで、より優れた製品やサービスを創出するためには、膨大な経営データを活用した需要予測や市場分析が不可欠といえるでしょう。
そこで重要となるのが、企業の基幹情報を統合管理するERPシステムです。2027年にメインストリームサポートが終了する旧世代のSAP ERPを利用している企業は、SAP S/4 HANAへの移行が喫緊の経営課題といえます。
SAP S/4 HANAへの移行やシステム環境のクラウド化を検討している企業は、NetApp社の導入支援サービスを利用してみてはいかがでしょうか。
このブログは2023年8月まで公開していましたストレージチャンネルからの転載となります。
2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。