フラッシュメモリについて、何となくイメージはできるものの具体的にどういったものなのか知らない人もいるのではないでしょうか。フラッシュメモリとはどういう仕組みの装置なのか、どのようなものに使われているのかを解説します。
わかりやすく言うと、フラッシュメモリとはデータの記録や消去ができる小型の保存媒体のことです。パソコンのUSBポートに接続してデータのやりとりを行うタイプのものが代表的で、当時、東芝の研究者だった舛岡富士雄氏が1987年に発明したものです。当時はまだスマートフォンもない時代であり、安価でコンパクト、大容量のメモリー市場はありませんでした。
しかし、あらゆるものがデジタル化されている昨今、フラッシュメモリはデジタルカメラや携帯電話、電子レンジや冷蔵庫といった家電製品にも利用されています。現代社会において、なくてはならない存在と言っても過言ではありません。
フラッシュメモリは「電源を切っても保存内容が失われない」という特徴があります。このことを不揮発性と呼び、逆に電源を切ると記録が失われるものを揮発性と呼びます。フラッシュメモリは電源に常時つないでいなくても記録が消えることはないため、USBメモリやSDカードなど、持ち運びするデバイスなどに活用できます。
フラッシュメモリの規格にはNAND型とNOR型の2種類があります。NAND型とはNot ANDの略で、日本語では主にナンドと発音されています。NAND型はアクセスがブロック単位で、データを順に読み込んでいくシーケンシャルアクセスに向いています。しかし、指定された箇所を直接読み込むランダムアクセスは低速なのが特徴です。
回路が小規模で高集積化もしやすいので、単価が低く手に入りやすいといったメリットもあります。そのため、パソコンやスマートフォン、デジタルカメラなど持ち運ぶデバイスに広く利用されています。
スマートフォンを中心とした携帯機器の広まりに続き、IoTや5Gといった技術も普及しつつあるため、今後、NAND型フラッシュメモリの需要はさらに高まると考えられるでしょう。
一方、NOR型は主にノアと呼ばれ、NAND型とは用途ごとに使い分けられています。NOR型は特定のデータ場所に直接アクセスするランダムアクセスに優れたフラッシュメモリです。
NOR型は一般的なデータ保存媒体には用いられませんが、パソコンやルーターやプリンタなどの機器の制御プログラムを記録したり実行したりといった役割を果たします。順に読み込むシーケンシャルアクセスには向いていないため、基本的な書き込みや消去の速度は遅いといった側面もあります。また、高集積化もしにくいためNAND型と比較すると高額です。
フラッシュメモリは、現在さまざまな形であらゆる製品に用いられています。具体的にどういったものがあるのか、代表的なものをいくつか見ていきましょう。
フラッシュメモリと聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのがUSBメモリでしょう。USBメモリは、パソコンのUSBポートに差すことでデータを転送できる小型の記録媒体です。データの転送中でなければ、パソコンの電源がついている状態でも抜き差しが可能で、このことを「ホットプラグ機能」と呼びます。
サイズはライターほどで、ポケットに入れられるほど小さく軽いため持ち運びに適しています。特に複雑な設定もいらず、パソコンに差し込むだけで高速なデータのやりとりが行えるので、誰でも手軽に利用できる便利なデバイスです。
ただ、内部に搭載されているフラッシュメモリには寿命があり、長く使いすぎるとデータが欠損してしまう恐れがあります。近年USBメモリの保存容量はかなり大きくなってきてはいますが、あくまでデータの持ち運びに用いるものであって、ハードディスクのように長期的に保存しておくものではないという認識を持っておいた方が安全でしょう。
近年スマートフォンが爆発的に普及したことに伴い、microUSBやLightning端子のついたUSBメモリも開発されています。これを利用することで、パソコンと同じようにスマートフォンやタブレットでもUSBメモリでデータのやりとりを行うことが可能です。また、紛失や盗難などによる情報の漏洩に備え、パスワードを設定したりデータを暗号化したりできるセキュリティに強いUSBメモリもあります。
SDカードは非常に薄く小さなチップ状の記録装置です。その小ささから、主にスマートフォンやデジタルカメラ、携帯用のオーディオ機器やゲーム機などの記録媒体として用いられています。
SDカードには3つの規格があり、小さい順からmicroSD、miniSD、SDと呼ばれています。カードの種類は用いる機器によって使い分けられています。例えばデジタルカメラにはSDカードが、スマートフォンにはmicroSDが多く使われています。microSDはカードアダプターを使うことでSDカードのスロットに差し込むことが可能です。対応していないサイズのカードは当然用いることはできないため、購入時にはどのSDカードが必要なのか確認が必要です。
また、SDカードは容量によっても3種類に分けられます。通常のSDカードは2GBまでですが、SDHCと呼ばれる規格は32GBまで、SDXCと呼ばれる規格は2TBまでの容量に対応しています。SDHCやSDXCは使う機器が古い場合は対応していないこともあるため注意が必要です。SDカードを購入する際は、カードそのもののサイズだけでなく容量の規格にも対応しているか、利用する機器の仕様もチェックしておきましょう。
SSDとはソリッド・ステート・ドライブの略で、フラッシュメモリを活用した大容量のストレージです。
USBメモリやSDカードと違って、持ち運び用や携帯機器用のものではなく主にパソコンの記録装置として使われています。少し前までは、パソコン向けの大容量内蔵ストレージといえばHDDが主流でした。近年は保存できる容量が増えてきたことでフラッシュメモリを活用したSSDも普及しつつあります。
SSDの最大の特徴は、その読み込みの高速性です。フラッシュメモリの読み込みの速さを生かすことで、OSをあっという間に起動させることができます。
少し前まではSSDにはOS起動などのプログラム面の読み込みをさせ、データ保存はHDDに行うといったように使い分けられていましたが、大容量のSSDが登場してきたことで、SSDをHDDのようにそのままストレージとして活用する人も増えてきています。容量の大きなSSDはHDDと比較してまだ高額であり、データの保存期間がHDDよりも短いといった見方もあります。
HDDはCDプレイヤーのように高速回転するディスクに磁気ヘッドというパーツを近づけることでデータの読み書きを行います。そのため、場合によっては駆動音が気になることもあります。ただ、そのぶん壊れる直前に異音などの予兆が起こることが多く、完全に故障してしまう前にデータを移行させておく目安にもなるので、一概にデメリットとは言えません。
また、HDDは精密な作りをしています。ちょっとした衝撃で磁気ヘッドがディスクを傷つける恐れもあるため、取り扱いにはSSD以上に十分な注意が必要です。
一方、SSDはフラッシュメモリを集積した大容量ストレージで、用途は同じですがその仕組みはHDDと全く異なります。高速な読み込みが可能で静音性も高いといったメリットがありますが、HDDと比較するとまだ容量は少なめで高額です。
よく耳にするフラッシュメモリという単語ですが、その用途は小さなSDカードからパソコンのストレージとなるSSDまで様々です。特に、SSDとHDDは使い道が似ていて混同されがちなので、違いを抑えておくとそれぞれの使い道がわかりやすいでしょう。
フラッシュメモリは、USBメモリやSDカード、SSDなどといった多くの記録媒体に用いられています。昔は主にパソコンのデータを持ち運ぶために使われていましたが、最近はスマートフォンやタブレットに対応したUSBメモリも増え、SDカードも差し込む機器に応じて様々なサイズが展開されています。また、記録できる容量も増え、HDDのようにパソコンのストレージとして活用できるSSDも主流となりつつあります。
近年あらゆる分野でIoTやAI化が進められているため、フラッシュメモリの需要はさらに高まっていくことでしょう。
このブログは2023年8月まで公開していましたストレージチャンネルからの転載となります。
2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。