近年、企業で扱われるデジタルデータが急増するようになり、ストレージの仮想化技術を取り入れる企業が多くなりました。仮想的にストレージプールを作成することで社内ストレージの利便性を上げる技術として注目されていますが、まだまだ、仮想化の実態について詳しくご存知ない方も多いのではないでしょうか。今回は、ストレージ仮想化について、詳しく説明していきます。
企業に存在する業務システムの大半がオフラインからオンラインへ移り変わり、扱うデータも通信される情報量も爆発的に増加した結果、画像や動画、テキストなどのコンテンツが社内ストレージを長期的に圧迫するようになりました。
かつてのクライアントサーバー型コンピューティングやインターネットコンピューティングは、企業の業務システムごとにサーバーやストレージを用意することが主流でした。
1台のサーバに対して1台のストレージを直接接続するストレージは、爆発的に普及しましたが、一方で余っているストレージ領域を他のサーバと共有できないため、遊休資産が増えるという欠点がありました。つまり、これがサイロ化されたシステムの問題として認識されだしたのです。
そんな状況を打破するために考案された技術が、複数のストレージを仮想的に結合することで運用するという方法です。まさに、これがストレージの仮想化技術のことで、「ストレージプール」と呼ばれます。
ストレージの仮想化とは、一体どういったものなのか概要について説明していきたいと思います。
ストレージの仮想化とは、各所に存在するストレージ装置を仮想的に1つの場所に情報格納庫として使用可能な状態にするストレージ技術全般のことを表します。
そのため、仮想化されたストレージは、内蔵型のハードディスクのように一つの論理的な格納庫(プール)として取り扱うことができます。アプリケーションが生成するデータは、このプールに保存され(実際には物理ディスクに保存)、ストレージ管理者は必要に応じて柔軟に拡張することが可能になります。よって、無駄なくストレージを有効活用できることになるのです。
ストレージを仮想化することで、どんなメリットが得られるのでしょうか。今回のメインテーマでもあるストレージ仮想化のメリットについて説明します。
そもそも仮想化とは、コンピュートやストレージ、ネットワークといった物理リソースを抽象化し、それらを論理リソースとして表す技術のことを意味します。
仮想化によって物理リソースのストレージプールが作成されることで、リソースのキャパシティを集合的に捉えることが可能となりました。ストレージの仮想化により、ストレージプールに追加されたリソースを一元管理できるようになることで、各システムにおけるストレージ容量の均一化が進み、未使用容量の有効活用が進むようになりました。ストレージが必要なシステムに対して、いつでも自由に割り当てられる仮想化技術は、社内ストレージの仕組みを分散から統合へと根本から改善する手段となっています。
優れたストレージ仮想化技術を利用すれば、企業内で働く従業員が作業中でもシステムを停止させることなく、ストレージの増設や設置、交換が可能となるため、ストレージ管理における運用の手間を大幅に削減できます。また、何かしらの理由によってデータが破損し、リストアする場合でもデータの管理が一元化されているため、復旧もしやすくなります。
過去には、社内ストレージを導入する場合、将来的な需要を想定して比較的大型なストレージを導入することが一般的でした。しかし、当分利用する予定のないストレージまでコストをかけてスペースを確保すると、初期費用は高くなりますし、年間の消費電力も上がってしまいます。
ストレージの仮想化を導入すれば、今必要なストレージに限定して導入し、必要性に応じて拡張できるようになります。そのため初期費用を最低限に抑えることが可能になるのです。ストレージ仮想化は、コスト削減やグリーンITを実現する技術として高い注目を集めています。
上記の紹介でストレージ仮想化の概要やメリットは理解できたことでしょう。実は応用的な使い方でシンプロビジョニングがあります。ご存知でしょうか?
シンプロビジョニングは、将来的に必要となる容量を確保したようにサーバー側に見せかけつつも、物理デバイスは必要なぶんだけに留めることを可能にする技術です。つまりサーバーに対しては100TBの仮装ボリュームを見せつつも、実際の物理デバイスは10TB分の確保で済ませることが可能になるということです。
データが必要になってきたら、物理デバイスを追加して実容量を増やすことになりますが、サーバー側では全くその変化はわかりません。
これの機能を使えば、ストレージ容量を増やすために都度サーバーの設定を変えたりする必要がなくなるため管理が楽になる点が大きなメリットになります。また、アプリケーションを導入する際に、将来まで含めたストレージの需要予測やキャパシティプランニングから解放されるため大きな工数削減に繋がるというメリットもあります。
プライベートクラウドやハイブリッドクラウドが主流になった現在、社内外に配置されたデータをいかに効率的かつ安全に管理するのかという課題をコストの問題とともに解決する必要があります。
ストレージを仮想化すれば、ストレージ容量に無駄が生じることがありませんし将来的に増え続けるデータにも柔軟に対応することができるようになるのです。
このブログは2023年8月まで公開していましたストレージチャンネルからの転載となります。
2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。