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NASとは?メリットや機能、HDDやクラウドとの違いを解説

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庄司 知代 (Tomoyo Shoji)
庄司 知代

NASとは、ネットワークを介してファイルを保存・共有できるストレージです。NASと同じLANで接続されたデバイスは、どこからでもNASにアクセスすることができます。NASとはどのようなものでしょうか。またストレージとして、DASやファイルサーバー、オンライン(クラウド)ストレージやSAN、ユニファイドストレージといったものもありますが、それぞれどのようなことができるのでしょうか。NASのメリットや機能、選び方についても確認していきましょう。

NASとは

NASは「Network Attached Storage」の略で、ネットワークを介してファイルを保存共有できるストレージ(記憶媒体)です。

数T(テラ)Bの大容量のハードディスクドライブ(HDD)や、ソリッドステートドライブ(SSD)を搭載しています。NASはLANケーブルでネットワーク上にあるルータやハブに接続し、ファイル単位でNFSやCIFSといったプロトコルを用いてデータを読み書きします。

コンピュータに直接つなぐわけではないため、同じネットワーク(LAN)上のデバイスは、一台のみならず複数台NASにアクセス可能です。また、NASはRAIDという、万が一のNAS内のHDDやSSDの故障時もデータの復旧やアクセスを可能にする仕組みがあります。

近年では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、リモートワークを余儀なくされている企業が増えています。NASを用いることで、会社のデータに自宅からのリモートアクセスも可能になります。

DAS(内蔵HDD、外付けHDD、外付けSSD)とは 
DASとはDirect Attached Storageの略で、コンピュータに直接接続されたストレージを指します。コンピュータに内蔵されているHDDや、外付けHDD、 外付けSSDなどはすべてDASに分類されます。

パソコンの空き容量が少ないとき、ストレージ容量を増やせるのがDASです。

外付けHDDや外付けSSDは、USB接続などで取りつけて使うため、着脱が容易な点は大きなメリットといえます。

ファイルサーバーとは
ファイルサーバーとは、ネットワーク上でファイルを共有するために設置される装置や仕組みです。ファイルサーバーという名称の機器が存在しているわけではなく、NASやSAN、オンラインストレージもファイルサーバーの一種といえます。

ネットワークに接続されたコンピュータに、ファイル共有のための設定をしたもの(NFS、CIFS環境を構築したもの)をファイルサーバーと呼ぶことが多く、区別のため、この記事ではファイルサーバーをこの意味で扱います。

コンピュータをファイルサーバーとして用いることで、詳細な情報セキュリティ対策が可能となるのです。反面、設定の煩雑さはデメリットといえるでしょう。

オンラインストレージ(クラウドストレージ)とは
オンラインストレージとは、インターネット上でデータの保管場所を提供するサービスです。 クラウドストレージと呼ばれることもあり、代表的なものとしてGoogleドライブやOneDriveなどが挙げられます。多くのインターネットストレージサービスは無料または月額制(サブスクリプション)、従量課金制で提供されています。そのため、自身でストレージを用意する必要がなく、導入コストが少なくすみます。アカウントの導入さえしておけば、インターネットを介して提供されるデバイス上で、データを扱うことができます。複数のユーザー間でのデータ共有や共同編集も容易です。

反面、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクは高まります。アカウントのパスワード管理の徹底や、データの運用ルールの作成が必要です。

SANとは
SANとは、Storage Area Networkの略で、複数のコンピュータとストレージの間を結ぶ高速ネットワークです。固定長のブロック単位で、FC、 SAS、 SATA、 iSCSIといったプロトコルを用いてデータを読み書きします。SANは専用の独立したネットワークを生成し運用します。 ストレージをまとめられるため、ストレージを効率よく使えるようになり、管理も容易になるのは大きなメリットです。

複数のストレージに対し複数のサーバーからアクセスできるため、サーバー集約やストレージ統合といった大規模サービスに適しています。一方デメリットとして、ハードウェアのコストが高いこと、構築と管理には専門知識を必要とする点が挙げられます。

ユニファイドストレージとは
ユニファイドストレージは複数のアクセス形式やプロトコルをサポートし、筐体内にSAN用とNAS用の領域をもつストレージです。ユニファイドストレージでは、SAN対応のストレージはSANのプロトコル(FC、iSCSI、FCoE)を用いてブロック単位でアクセスし、NASはNFSやCIFSといったプロトコルを用いてファイル単位でアクセスを行います。

従来、NASとSANはデータアクセス手法や筐体が異なるため、用途によって使い分けられていましたが、ユニファイドストレージを使うことでストレージを統合できます。ユニファイドストレージを利用すると、NASやSANのスペースや運用管理を一本化できます。

NASとファイルサーバー、SAN
NASとファイルサーバー、SANの特徴をまとめます。

 

項目

NAS

ファイルサーバー*

SAN

データアクセス用プロトコル

NFS、CIFS

NFS、CIFS

FC、SAS、SATA、iSCSI

アクセス方式

ファイルアクセス

ファイルアクセス

ブロックアクセス

データの転送速度

<複数人でのアクセス

アクセス制限

導入の容易さ

コスト

コンピュータによる

可用性

セキュリティ

データアクセス用プロトコル

NFS、CIFS

NFS、CIFS

FC、SAS、SATA、iSCSI

NASのメリット

NASを利用するメリットを確認していきましょう。

複数のデバイスでデータ共有
NASを用いると、LANで接続された複数のデバイスからアクセス可能となります。そのため、LAN内のデバイスすべてでファイル共有が可能です。

NASで設定することで、職場はもちろん家庭でも、書類や音楽・動画といったファイルの共有ができます。

Wi-Fi対応のNASを使うと無線接続により、LAN内のどこからでもアクセスが可能になります。

ファイルバックアップ
ファイルバックアップとは、稼働中のシステムのデータを別のストレージにコピーして保存することです。

NASには、RAIDというデータの信頼性や安全性を向上させるための仕組みをもつモデルがあり、バックアップ先として優れています。

複合機やFAXと連携 

NASをLAN内の複合機やFAXの転送先として指定すると、受信したFAXをpdf形式に変換し、直接NASサーバー内に保管できるようになります。

機種によっては、NAS上に保存されたデータに対し、外出先からも参照可能です。 この機能があると、いつどこからでもNASにアクセスできるようになるため、大量のデータを持ち歩く必要がなくなります。

NASの機能

RAID
NASは、データアクセスや信頼性、安全性を向上させるため、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)という仕組みをもつものが一般的です。RAIDは複数のHDDを組み合わせてデータを保存し、冗長性を持たせています。RAIDにはさまざまなレベルがあり、信頼性や読み書き速度によってRAIDのレベルは異なります。代表的なものは以下のとおりです。

RAID0(ストライピング)
複数台のハードディスクにデータを分散して読み書きし、高速化を行ったもの。速さのみを求める場合のみ利用します。

RAID1(ミラーリング)
複数台のハードディスクに、同じ内容を書き込みます。高速化は望めませんが、信頼性は高くなります。使用できるディスク容量は半分以下となるので注意が必要です。

RAID5
複数のディスクにデータを分散して書き込む(ストライピング)と同時に、パリティと呼ばれる誤り訂正符号も生成してディスクに書き込みます。NASのディスク一台が故障した場合でも、パリティによりデータを復元できるため、信頼性もRAID0より高くなります。

RAID6
パリティを二重に生成し、RAID5より耐障害性を高めたものです。

RAID5は2台のディスクが故障した場合は復元できませんが、RAID6では復元できます。

リモートアクセス
リモートアクセスとはインターネット経由で、LAN外部からNASのデータへのダウンロードやアップロードが可能になる機能で、NASの機種によってはリモートアクセスが利用可能です。

リモートワークの場合にも、リモートアクセス機能と社外の端末とNASの間に、インターネット上の仮想的なプライベートトンネルであるVPNを組み合わせると、NASのほぼすべての機能を使えるようになります。ただし、セキュリティ設定が十分でないと不正アクセスの原因になる可能性があるため、注意が必要です。

UPSとの連動
UPS(Uninterruptible Power Supply)とは、日本語で「無停電電源装置」を意味します。 接続されている機器のコンセント電源が途切れた場合も、一定時間電力を供給し続ける装置です。

NASはデータを保護するために、さまざまな冗長性のしくみやバックアップ機能を備えていますが、停電などで電源に瞬電・停電が発生すると、システムは停止してしまいます。

突然のシステム停止はNASのシステムやストレージを損傷させ、データ消失の可能性があるのです。

UPSとNASを連動させると、NASの瞬電・停電の場合、NASはUPSから電力の供給を受けつつ安全にシャットダウンできるようになります。

職場ではNASに保存されているデータは重要なものが多いため、NASとUPSの連動は必須となるでしょう。

アクセス権管理
NASではファイルのアクセス権管理が可能です。

アクセス権管理が設定されていない場合、たとえば会社では、財務情報や人事・給与に関する情報に誰でもアクセス・編集可能となり、機密情報の漏えいのリスクが高まります。

NASで共有フォルダーの詳細アクセス権を設定することにより、各フォルダーに対し、ユーザー・グループごとに権限を設定でき、不特定多数のユーザーアクセスを防げるのです。

NASの選び方

NASには大きく分けて、家庭用と法人用があります。家庭用のNASはストレージ機能に加え、動画や写真、音楽の管理などさまざまな機能を持っているのが特徴です。

法人用のNASはファイルの安全な保管、共有を主に目的としており、ストレージ容量が大きく、利用人数が多くても高速にアクセスできるものや、データの安全性を高めたものがあります。

利用人数やストレージサイズ、ストレージの種類、データの安全性について詳細を確認していきましょう。

利用人数
法人で利用の場合、多くの人数が一度にNASにアクセスするケースが考えられます。その場合、高性能なCPUで、高速規格対応となっている機種を選ぶ必要があります。

推奨利用人数は、同時利用者数の上限として情報提供されていることがあるので、確認して選ぶようにしましょう。

ストレージサイズ
家庭で利用する場合、1TB〜2TB程度の容量が目安となります。写真や動画を大量に保存する場合は、必要に応じて容量の大きいNASを選ぶようにしましょう。

企業の場合、ストレージサイズは使う人数や用途、そして安全性のレベル(RAIDのレベル設定)に依存します。新規導入の場合、保存予定データの3倍の容量をもつNASの導入を考えておいたほうがよいでしょう。

注意点は、HDDやSDDのメーカーの十進法単位でのドライブの容量表示です。ドライブの容量表示は、1000Byte=1KBとして計算されています。一方、WindowsやMacでは1024Byte=1KByteで計算し、表示されます。

そのため、たとえば製品の容量が1TB(1000GB)と表示されているNASを購入すると、WindowsやMacのコンピュータ上で容量を確認すると、931GBと表示されてしまいます。この点も踏まえ、容量に余裕をもってNASを選ぶことが大事です。

データの安全性
多くのNASは、RAID0やRAID1をサポートしています。高性能NASはRAID5やRAID6、それ以上のものをサポートしていることが多いです。

家庭用NASでは、データの安全性より容量を重視することが多いため、RAID0をサポートしているNASを選ぶとよいでしょう。

法人用ではデータの安全性を高めるため、RAID1以上の設定が望ましいです。RAID1の場合、容量が2TBのNASを購入しても、実際に使える容量は1TB以下となります。

RAID5や6を設定する場合は、HDDやSSDが4つ以上搭載された4ドライブや、さらに多くのドライブの製品を選ぶことになります。

セキュリティ
NASはネットワークに接続されていれば容易にアクセスできる反面、ウイルス感染の弱点となる場合があります。

ウイルスに感染したパソコンでNASにアクセスすると、NASもウイルスに感染します。さらにNASに接続された他のコンピュータが次々に感染し、会社全体に蔓延してしまう可能性もあるでしょう。

NASのウイルス感染を防ぐには、NASに接続するコンピュータと、NASそれぞれで対策をする必要があります。NASに接続するコンピュータにはセキュリティ対策用のソフトウェアを導入

導入しましょう。NASの対策としてはアクセス権管理や認証設定を強固なものとし、セキュリティ対策用アプリケーションをインストールする方法があります。

まとめ

ファイル共有やバックアップといったメリットに加え、信頼性や安全性を向上させる仕組みをもつNASについて紹介しました。

近年では、NASの拡張や、SANのメリットも同時に活かして一元管理ができるユニファイドストレージの人気が高まっています。

NetApp FASシリーズは、NASおよびSANのプロトコルをサポートするユニファイドストレージです。

拡張性に優れ、データ保護機能も充実しており、災害対策を簡単に構築する機能を備えています。ぜひ検討してみてください。

このブログは2023年8月まで公開していましたストレージチャンネルからの転載となります。

庄司 知代 (Tomoyo Shoji)

庄司 知代

2019年4月よりNetAppに入社。IT業界でのマーケティング業務にて長年に渡り培ってきた経験を活かし、ABM、イベント企画・運営、コンテンツマーケティング、広告など幅広くフィールドマーケティング業務に従事しています。

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脚注

    1. ネットワークに接続されたコンピュータに、ファイル共有のための設定をしたもの
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